ブックカフェ「Books×Coffee Sol.」は、京都駅八条口から東に歩いて7分くらいのところにある。メニューは、韓国テイストを中心としてどれもこだわりを感じられるものばかりである。手づくりの焼き菓子もあり、呑みにもカフェとしてもいける。なかでも餃子はおすすめで、鉄板で焼くためかもっちり、ふんわりと仕上がっている。ちなみにぼくは、キムチ焼き飯がお気に入りである。
店長のやんさんが実行委員長を務めている東九条マダンは、多くの在日韓国・朝鮮人が住むこの地域で毎年文化の日前後に行われる祭りで、昨年25年周年を迎えた。マダンとは朝鮮語で「広場」意味し、在日や被差別部落、多様な立場のひとびとが互いの違いを認め合い、多様な文化を生き生きと表現できる場をつくりだそうと目指してきた。祭りが近づくと、ここはマダンの事務所のようになり、練習を終えた参加者たちの集いの場となる。
やんさんは、そのなかのマダン劇(韓国現代演劇の形態のひとつで、いわゆる仮面劇の要素を多く含む)の脚本制作を担当している。やんさんの父親はそのマダン劇などの民衆文化運動を日本に紹介した方だったらしく、マダン劇の活動を通じて父親や家族と向き合ういい機会になっているとも言えると、やんさんは語っていた。
元々上京区に住んでいたやんさんは、24年前に東九条へ越してきた。
ー飲む、読むだけじゃない。人と人をつなぐ場所”BookCafe”なぜそこに集うだろうか。何をしているのだろうか。
編 移り住んで変わったことは?
「当時の東九条の印象は、第一に子どもたちのたくましさ。身体ごとぶつかりあって生きている現場から自分たちの文化を創り出そうとするエネルギーに、ある種の幻想を抱いていた。半ばその幻想に騙されて20数年の生活があり、ここ最近そんな生活がその幻想と一致してきた」
やんさんは『東九条の語り部たちⅠ・Ⅱ』という冊子の制作にも参加していて、東九条に住んでいるひとたちの聞き取りも行っている。一人ひとりの歴史がナショナルなものに回収されていくことがまかり通る今の時代に丁寧に、一人ひとりの話を聞いていく活動の重要さを感じたそうである。
そんなやんさんは、書くことへの重要性を最近特に感じているという。
編 今、興味のあることや向かっていきたい方向などあれば?
「ここ数年、光州に通いつづけていて、光州事件当時の弾圧を受けた家族のひととの交流をしている。行き始めた当初はほとんど衝動的な行動であったが、それを自分なりに言葉で紐解いていきたい。それは個人的な歴史ではあるけれども、その時代を生きたひとに共通するものがあるならば、それは書いてみたい」
今はマダンの参加者の集い場のようになっているところもあるが、ひとつの色に染まらない場になってほしいと、やんさんは考えている。貸しスペースとしてイベントもできるSolだが、新しいイベントを持ち込んでくれればそこから新しいつながりができる。Solというスペースの形は変わらないが、場は常に更新され、変化するものである。マダンの目指してきた<多様な文化を表現できる場>。新しい風を吹き込むのも楽しみ方のひとつであろう。(編集部・矢板)
ACCESS 住所 京都市南区東九条西岩本町16-2 TEL075-200-6855